誰か一人にでも役立てばそれでいい文章
- タイミング
- フットワーク
- スピリット
- イメージ
- バランス
この五つの要素のトータル、つまり総合力での勝負なのである。
他人を動かすのにも色々な手段がある。
しかし大きく分けると
魅力か恐怖か
の二通りになると思っている。
金や納得は魅力の類いであり、権力や暴力は恐怖の類いとなる。
動かす側はどちらでも人を動かすことは可能であるのだから、これはもう好みの問題と言っても間違いではない。趣味が良いか悪いかだ。
しかし動く側に回ると、どちらが良いのかは議論の余地はないだろう。
よほどの変わり者でもないかぎりは、恐怖の檻の中でビクビクしながら動くよりも、魅力の泉の中で優雅に泳ぎたいはずだ。
動かす側と動く側とでこの世の中は成り立っている。
これはどちらが上とかではなくて職種の違いである。
人生においてまず気づかないといけないのは、自分がそのどちら側の人間なのかということだ。
間違った認識をしてしまっていると物事はうまく運ばないはず。
自分の性質の正しい認識ができていてこそ物事はうまく運ぶようにできているからだ。
と、考えはじめたのがいつの頃だったのかはもう正確には覚えていない。
長きに渡って動きに動いてきた自分はてっきり動いてなんぼの人間なのかと思っていた。
しかしある時それはただの思い込みであったことに気づいた。
と感じたので、試しに人を動かしてみるという実験を試みてみたところ、これが面白いようにイメージ通りの結果が出始めた。
当然最初は半信半疑ではありながらも、思いきって自分の従来のスタイルを全く逆のものに変えるという決断を下したことには、我ながらあっぱれであったと今では思える。
いざ自分が動かす側に回った時に役に立ったのは、偉い人が書いた書物でも、先輩方のお説教でもなく、動いてきた、という経験だった。
この長年の実戦で培ってきたものというのは、張りぼてやメッキ加工や机上の空論ではない、金でも買えない、ケチケチせずに存分に努力と時間を支払ったことによる正当な報酬である。
その報酬が、動かす側に回った自分の唯一のバイブルとなって、今も心の奥に静かに、そして自信に満ち溢れて鈍い輝きを放っている。
さて、これから更に動かす側としてクオリティの高い仕事をする為には何が大事なのか
と、考えたときに先に書いた五つの要素が頭に浮かんでくる。
この五つの要素の中のどれか一つに特化している人は間違いなく動く側に回ったほうがいい。
その方が自分が活きる。
その逆に、ひとつひとつは特化している人には敵わなくても、この五つの要素を全て持っている人は、動かす側に回るべきだと思う。
そして、その持っている要素のクオリティを動く側は一点集中、動かす側は総合的に高めていくことに尽力すべきではないだろうか。
もちろん動かし手としての自分が好む動かし方は、魅力で引き寄せるというやり方だ。
馬の鼻先に人参方式である。
自分が動いていた時も、鼻先に人参があるのとないのとではやる気の度合いが全く違った。
人によってその鼻先にぶら下げるものはかえてゆく。
ある人には金、ある人には納得、またある人には成長という具合に。
そういう判断、実行は総合力がある人間にしかできないものだ。
タイミング、フットワーク、スピリット、イメージ、バランスの五つのトータル。
そのトータルを高めて勝負をすることが、自分に与えられた正しき道だと信じている。
どれか一つに特化している人は、そこを磨くことが正しき道だと信じてほしい。
この文章にも五つの要素を盛り込んだつもりだ。
必要のない人も多くいるだろうが、必要な人も必ずいるはずである。
誰か一人にでも、その心に建設的な動きを与えることができたならば、この文章はその本懐を遂げる。