よろず無駄無し屋

出たとこ勝負な文章ゆえの生々しさ

ストレスをためない秘訣

朝、自動販売機でミルクティーを買った。130円でだ。

取り出し口からそれを取り出し、ふと横に目をやると、100円の自販機がある。

しまった」と、思った。

全く同じものではないけれど、30円も安ければ別にほかの飲み物でも良かったのに、と少し悔やんだ。いや、よく思い返してみると、少しどころか大いに悔やんでいた自分が脳裏に甦る。

これだから自動販売機というヤツは困るんだ。

「間違えました」が通用しない。無慈悲である。

たかが30円くらいでセコいことを言うなという声が聞こえてきそうな雰囲気もするが、自分にとっての30円ZOZOTOWNの社長にとっての300万円等価である可能性が高い。

本来ならば、自分の好きな温かい飲み物を買って朝から上機嫌にいけるはずだったのに、横の自動販売機に気づいてしまったばっかりに、不愉快な朝のスタートとなってしまった時、あることばが頭に浮かんだ。

知らぬが仏

この言葉を考えた人はいったいどのような状況下でこのような名言を閃いたのだろうか。

更にもう一つ、追い討ちをかけるように言葉が浮かんでくる。

後悔先に立たず。忌々しいことばである。

この言葉を考えた人はきっと、今日の自分が噛み締めた後悔なんかよりもずっとシリアスな状況の中にいたに違いない、と考えると幾分心が軽くなった。

ミルクティーを飲み干すまでの数分の間に、このようなことが頭のなかで、さながら流れ星の如くに生まれては消えていった。

これは良い朝なのか、悪い朝なのか。

不必要な30円を支払ってしまった、という捉え方をメインとした場合には悪い朝だったということもできるだろう。

しかし、おかげで過去の賢人達が考え出した言葉に思いを馳せてみる機会を得た、という捉え方をメインとした場合には、心豊かに過ごすことができた良い朝だったと言えないこともない。

前向きな生き方を良しとする自分は後者の捉え方を支持しようと思う。

じゃないと今日の寝つきが悪くなってしまいそうだ。

眠りにつく前には、一日を振り返るという厄介な習慣が身についているからな。

なるべくならば、穏やかな気持ちで一日を終えたいものだ。

こうやって日々、地獄の餓鬼道とも言える浮き世で直面する様々な不愉快な出来事にも、なんとか前向きに捉えることができる一面を探しだし、良い一日だったと思いながら眠りにつくことが、自分の生きる上でのストレスをためない秘訣である、ということが言いたかっただけの話である。