よろず無駄無し屋

出たとこ勝負な文章ゆえの生々しさ

空間づくり

今日は春を感じさせる陽気だった。

寒さに弱い自分からしたら、できることならばこのまま春になってほしいところだけれども、そうは問屋がおろさないだろう。

まあいいさ。どうせ心頭滅却なんて非現実的な境地に至れるわけでもなし、あと少しの間、寒さに震えさせていただいて冬を満喫してやろう。

ところで、ウチの事務所にはエアコンというものが設置されていない。

暖房器具といえば、炬燵と石油ストーブである。

そのストーブの上には鉄瓶がいつも乗っている。ついでに言うと炬燵の上には王道とも言うべきミカンが常駐している。

木造平屋建てのこの事務所に気密性というものは皆無だ。

どこからともなくすきま風が入ってくる。

寒さに弱い軟弱者でありながらエアコンが持つ、部屋全体を暖める能力は好みじゃない。

寒い、寒いといいながら、ストーブの前で背中を丸め、手をかざしながら暖をとるというスタイルが好みなのである。

そこへ沸騰した鉄瓶の中の湯で熱いお茶でも用意すればなおのこと良い。

ここへ来る客人たちは意外とこういうのを喜んでくれる。

おそらくは、常にこういう状態だとキツいが、たまにだと風情があっていいじゃないか、というようなところなんじゃなかろうか。

昔から、それこそ小学生の頃から自分の好きなように空間を作る趣味があった。

山の中に一人で入っていき、人が来なさそうな所を探して秘密基地を作ったのが始まりだった。

それから、家が狭くて自分の部屋がなかったもんで、押し入れにスタンドライトと、漫画とお菓子を持ち込んで、その空間を楽しんだ。

大人になってからも、住んでいるアパートとは別に、小さなスナックの店舗を営業目的ではなく、ただ、自分の好みの空間を作りたいが為に借りていた。

今、あの空間を思い返してみると、薄暗い、なんとも妖しい雰囲気を醸し出していて、ダイヤトーンのドデカいスピーカーから流れてくる音楽に一人でよく酔いしれていたものだ。

自分の気に入る空間づくりほど楽しいものはない。

今の事務所は借りてまだ2年しか経たない。

空間づくりは一気に完成させるものじゃないと、自分は思っている。

じっくりと時間をかけて、すこしづつ、完成していくところに即席的ではない、深い味わいというものが生まれてくる。

ようやく2年という時間をかけて、基盤ができたかな、という感じのところだ。

これからどんな風にこの空間が、育っていくのかも人生の楽しみの一つなのである。