愛すべきデブ
とあるミカン問屋の主人の話をしよう。
年の頃は56、7、趣味はポケモン集めですこしオタク気質が入った常にだらしなくズボンがずり落ちていて肥満体の白いケツ半分を惜しげもなく晒しているユニークでありどこか憎めないその愛すべキャラクターには癒される。
理屈をこねるのが好きと見えて、ああ言えばこう言うところがありはするが、それはそれで別段こちらの害になることはないので時折イラっとする程度な許容範囲内であり、愛くるしいかぎりだ。
生活の中心がポケモン集めなんじゃなかろうかというくらいの熱の入れようで、暇潰しにポケモンの話題でも振ろうものならば食いつく食いつく。
いつも話が長くなって結局やぶへびとなってしまうのだが、それでもそんなどうでもいい喋りもゆるい感じの口調でまた和む。
根は真面目なようで人様に迷惑をかけるのを嫌がる紳士といえば紳士なのではあるけれど、常にはみ出した半ケツがある分紳士とまでは言い切ることができないのが残念なところではある。
常に愛飲してるのはコーラ。
それから駄菓子もやめられないようであり、肥満体になるべくしてなったハッキリと言ってしまうならばデブということになる。
それでもまぁ人生は楽しんでいそうではある。
親の代からの家業を継いで金に困ってるふうでもなし、ポケモン集めという健全な趣味を見つけ、デブになることに微塵も恐怖を感じていないが如くの食生活。
潔い。
この人を見るとこの言葉が脳裏に浮かんでくる。
なんでも奥さんに一回間食を止められたそうだがそのストレスで胃潰瘍になりかけたとかで間食が解禁となったという逸話もあるほどの猛者というかなんというかまぁ面白い。
縁あって月に数回ほどではあるけれどそのミカン問屋でお手伝いをしている。
世の中には色んな人がいる。
人間とは面白いものだ。
下手なコントを見るよりもその主人を見てたほうのがよっぽど面白い。
愛すべきデブ。
痩せようという気が微塵も感じられないその強気だかなんだかわからないぶれない姿勢には畏敬の念さえ感じている。